アクティブファンドはインデックスファンドに勝てないからやめとけ

投資の世界でしばしば議論されるテーマの一つに、アクティブファンドとインデックスファンドのどちらが優れているかという問題がある。

アクティブファンドは市場平均を上回るリターンを目指して運用されるが、多くの証拠が示すように、その目標を達成するのは容易ではない。実際、多くのアクティブファンドがインデックスファンドのパフォーマンスに劣るという現実が存在する。

本記事ではアクティブファンドがインデックスファンドに勝てない理由を詳細に解説し、なぜ投資家にとってインデックスファンドの方が賢明な選択であるかを明らかにする。

アクティブファンドが勝てない6つの理由

1. コストの問題

アクティブファンドがインデックスファンドに勝てない最大の理由の一つはその高い運用コストである。アクティブファンドではファンドマネージャーが市場分析を行い、銘柄選定をしてポートフォリオを構築するため、多額のコストがかかる。これには以下の要素が含まれる。

  1. ファンドマネージャーの報酬:ファンドマネージャーは高い専門知識と経験を持つため、その報酬も高額になる。彼らは投資家の資金を管理し、市場を上回るリターンを目指すため、優秀な人材を確保するためのコストが大きい。
  2. リサーチとアナリストチームの費用:アクティブファンドでは個別銘柄の分析や市場調査を行うために、多くのリサーチアナリストが雇用される。これに伴う費用も相当なものであり、これらのコストは最終的に投資家が負担することになる。
  3. トレーディングコスト:アクティブファンドは頻繁に銘柄を売買するため、取引手数料やスプレッドコストが発生する。これらのコストもファンドの運用成績に影響を与える。

これらの運用コストはインデックスファンドに比べて遥かに高く、アクティブファンドのパフォーマンスが市場平均を上回るためにはこれらのコストをカバーするだけのリターンを生み出さなければならない。しかし、これを達成することは非常に難しく、多くの場合、コストが投資家のリターンを圧迫する結果となる。

2. 市場効率性

市場効率性の仮説(Efficient Market Hypothesis, EMH)は全ての公開情報が既に株価に反映されているとする理論である。この仮説には三つの形態がある。

  1. 弱効率市場仮説:過去の価格情報はすべて現在の価格に反映されているため、過去の価格データを分析しても将来の価格を予測することはできない。
  2. 半強効率市場仮説:すべての公開情報(企業の財務報告書や経済ニュースなど)は現在の価格に反映されているため、公開情報に基づく投資戦略は有効でない。
  3. 強効率市場仮説:すべての情報(公開情報と非公開情報の両方)が現在の価格に反映されているため、インサイダー情報を使っても市場を上回るリターンを得ることはできない。

この仮説に基づけば、ファンドマネージャーが市場を上回るリターンを得るために特定の銘柄を選んでも、その選択が既に市場価格に織り込まれているため、長期的に見て市場平均を上回るのは難しい。市場が効率的であればあるほど、アクティブファンドが市場に勝つことは一層困難になる。

3. パフォーマンスを持続することの困難さ

アクティブファンドが一時的にインデックスファンドを上回る成績を収めることはあるが、そのパフォーマンスを長期間にわたって維持することは非常に難しい。以下の理由が考えられる。

  1. 市場の変動:市場環境は常に変動しており、過去に成功した投資戦略が未来においても成功する保証はない。市場のトレンドや経済状況の変化により、同じ投資戦略が異なる結果を生むことがある。
  2. 競争の激化:成功したアクティブファンドの戦略は他のファンドマネージャーや投資家にも知られることが多く、競争が激化する。これにより、特定の銘柄やセクターへの投資が過熱し、リターンが低下する可能性がある。
  3. ファンドの規模の影響:ファンドが大規模になると、投資の柔軟性が失われる。大きな資金を一度に動かすことは困難であり、流動性の低い銘柄への投資が制限されるため、パフォーマンスが低下する。

これらの要因により、アクティブファンドが長期間にわたりインデックスファンドを上回るリターンを維持することは難しく、短期的な成功が必ずしも将来の成功を保証するものではない。

4. 情報の非対称性による優位性の消失

アクティブファンドマネージャーは市場動向や企業の財務状況について深い知識と洞察を持っていることが多い。これにより、他の投資家よりも有利なポジションを取れると考えられている。しかし、以下の理由から、その情報の優位性は薄れつつある。

  1. 情報の公開と透明性:現代の金融市場では企業の財務報告や業績予想、経済指標などが非常に迅速かつ広範に公開されるようになっている。SEC(米国証券取引委員会)や日本の金融庁などの規制当局も、情報の公開を厳格に求めているため、一般投資家もこれらの情報に簡単にアクセスできる。
  2. インターネットとデータ分析技術の発展:インターネットの普及とビッグデータ解析技術の進化により、個人投資家でも大量の情報を収集・分析することが可能になっている。これにより、従来はアクティブファンドマネージャーのみが享受していた情報の優位性が低下している。
  3. 情報の均質化:グローバルな市場では情報が迅速かつ広範に伝達されるため、特定の情報が特定の投資家だけに有利に働くことが少なくなっている。情報の均質化により、アクティブファンドマネージャーが他の投資家に対して一方的に有利な情報を持つことが難しくなっている。

これらの要因により、アクティブファンドマネージャーが情報の非対称性を利用して市場や一般の投資家を上回るリターンを得ることは一層困難になっている。

5. マーケットタイミングの難しさ

アクティブファンドは適切なタイミングで売買を行うことで市場を上回るリターンを目指す。しかし、以下の理由からマーケットタイミングは極めて難しいとされる。

  1. 市場の予測困難性:市場は様々な要因によって動くため、短期的な動きを正確に予測することは非常に困難である。例えば、突発的な経済指標の発表や地政学的リスクの発生など、予測不可能な要素が市場に大きな影響を与えることがある。
  2. 感情の影響:市場は投資家の感情によっても動かされる。恐怖や欲望といった感情が市場の動きに影響を与えるため、理論的な分析だけでは適切なタイミングを見つけることが難しい。
  3. 取引コスト:頻繁な売買を行うと、取引手数料や税金などのコストが発生する。これらのコストはリターンを減少させるため、マーケットタイミングが成功した場合でも、実際のリターンは期待よりも低くなることが多い。
  4. プロサイクリカルな行動:多くの投資家が同時に同じ方向に動くと、相場が過熱したり急落したりすることがある。アクティブファンドマネージャーが適切なタイミングで売買を行うつもりでも、市場全体の動きに巻き込まれて適切なタイミングを逃すことがある。

これらの理由から、マーケットタイミングによる利益の獲得は非常に難しく、多くのアクティブファンドがインデックスファンドを上回ることができない原因の一つとなっている。

6. 投資家の行動バイアス

アクティブファンドの運用において、投資家自身の行動バイアスも大きな問題となる。行動経済学の研究によれば、投資家はしばしば非合理的な決定を下す傾向がある。以下にその具体例を挙げる。

  1. 過信バイアス: アクティブファンドマネージャーは自分の分析能力や判断力を過信する傾向がある。この過信はリスクの高い投資や過度な取引を引き起こし、結果としてパフォーマンスの悪化を招く。
  2. 短期志向: 多くの投資家は短期的な利益を追求するため、アクティブファンドマネージャーに対しても短期的な成果を要求する。このプレッシャーは長期的な戦略よりも短期的な成果に偏った運用を助長し、ファンドの安定性を損なう。
  3. 感情的な判断: 市場の急激な変動に対して、投資家は感情的に反応することが多い。市場が下落するとパニック売りを行い、逆に市場が上昇すると高値掴みをしてしまう。このような行動はアクティブファンドの運用成績に悪影響を与える。
  4. エントリーとエグジットのタイミングミス: アクティブファンドマネージャーは市場のタイミングを測ることが求められるが、これを正確に行うのは非常に難しい。タイミングのミスは大きな損失を招くことがある。

このような行動バイアスが重なることでアクティブファンドの運用成績は不安定となり、インデックスファンドに対して劣位に立つことが多い。投資家がこれらのバイアスを認識し、冷静な判断を下すことが求められるが、それは容易なことではない。

アクティブファンドが儲けているように見える理由

ここまで説明した通り、アクティブファンドがインデックスファンドに勝てない理由は複数ある。中には高いパフォーマンスを継続しているアクティブファンドもあるが数は少ない。それでもアクティブファンドが儲かっているように見えるのは選択バイアスと生存者バイアスという二つの重要なバイアスが存在するからである。これらのバイアスはアクティブファンドの実際のパフォーマンスを過大評価する原因となるため、投資家は注意を払う必要がある。

選択バイアス

まず、選択バイアスについて詳しく説明する。選択バイアスとは成功しているファンドのみが目立ち、その背後に存在する多数の失敗したファンドが見過ごされる現象を指す。これはファンドの成績を評価する際に、成功しているファンドが取り上げられやすいためである。

例えば、メディアや投資レポートでは優れた成績を収めているアクティブファンドが紹介されることが多く、これにより投資家は成功しているファンドだけが存在するかのような錯覚に陥る。

この選択バイアスにより、実際には多くのアクティブファンドが市場平均を下回る成績であるにもかかわらず、全体のパフォーマンスが過大評価されることになる。

生存者バイアス

次に、生存者バイアスについて説明する。生存者バイアスは長期間にわたって存続しているファンドだけが評価対象となり、過去に失敗して閉鎖されたファンドが考慮されない現象を指す。これは投資パフォーマンスの統計を取る際に、現在も運用されているファンドだけがデータに含まれるためである。失敗して閉鎖されたファンドはデータから除外されるため、実際のアクティブファンドの成功率やパフォーマンスが正確に反映されない。

例えば、過去10年間で新規設立された100のアクティブファンドのうち、50のファンドが閉鎖されてしまった場合、評価対象となるのは残りの50のファンドのみである。このため、存続しているファンドのパフォーマンスが良好であったとしても、それが全体のアクティブファンドのパフォーマンスを正確に反映しているとは言えない。

このようなバイアスが存在するため、アクティブファンドのパフォーマンスを評価する際には注意が必要である。選択バイアスと生存者バイアスの影響を受けないようにするためには包括的なデータセットを用いることが重要であり、過去に閉鎖されたファンドも含めた評価が求められる。また、個々のファンドの成功事例だけに注目するのではなく、全体的な傾向を理解することが投資判断において重要となる。