バーゼルⅢ(バーゼルスリー)とは?わかりやすく説明

銀行のルールというものを聞いたことがあるだろうか?銀行が多くのお金を扱う場所であることは知っているだろう。しかし、そのお金をどのようにして安全に守るかということは非常に重要なことである。今回はそのための特別なルール「バーゼルⅢ(バーゼルスリー)」について、誰でも分かるように説明する。

銀行は何をしている場所か?

まずは銀行が何をしているのかをおさらいする。

銀行は人々からお金を預かり、そのお金を他の人や会社に貸し出す場所である。預けた人には利息という形でお金を少しずつ増やして返し、借りた人はそのお金を使って様々な活動を行う。

しかし、たくさんのお金を預かったり貸し出したりするため、きちんと管理しないと大変なことになってしまう。

そのためのルールがバーゼルである。バーゼルⅠから始まり現在はバーゼルⅢが適用されている。

バーゼルⅢとは何か?

バーゼルⅢとは世界中の銀行が安全にお金を扱うための包括的な規制フレームワークである。

このルールはスイスのバーゼルという場所で国際決済銀行(BIS)のバーゼル銀行監督委員会(BCBS)によって策定されたため、「バーゼルⅢ」と呼ばれている。

バーゼルⅢの目的は銀行の健全性を確保し、金融システム全体の安定性を向上させることである。これにより、銀行の破綻リスクを低減し、預金者や投資家が安心してお金を預けることができるようになる。

バーゼルⅢのポイント

バーゼルⅢにはいくつかの重要なポイントがある。これらのポイントは銀行が直面するリスクを適切に管理し、健全な財務状態を維持するために設けられている。以下に、それぞれのポイントを詳しく説明する。

自己資本比率

自己資本比率(Capital Adequacy Ratio)は銀行がどれだけの資本を持っているかを示す指標である。具体的には銀行が持っている自己資本をリスクアセット(リスクがある資産)の総額で割ったものを指す。

この比率が高いほど、銀行は経済的なショックに対して耐性が強いとされる。自己資本比率にはいくつかの階層があり、バーゼルⅢでは以下のように分類されている。

  1. コア自己資本(Tier 1 Capital):これは最も質の高い自己資本であり、普通株式や利益剰余金などが含まれる。銀行が最初に損失を吸収するために使われる資本である。
  2. 補完的自己資本(Tier 2 Capital):これはコア自己資本に次ぐ質の資本であり、劣後債務や再評価準備金などが含まれる。これも損失吸収に使われるが、Tier 1よりも劣る。

バーゼルⅢでは銀行に対して一定の自己資本比率を維持することが求められている。具体的には最低でも8%の総自己資本比率を維持することが求められ、そのうちTier 1 Capitalは4.5%を下回ってはならないとされている。また、追加のバッファー(資本保存バッファーやカウンターシクリカル・バッファー)も設けられている。

流動性カバレッジ比率

流動性カバレッジ比率(Liquidity Coverage Ratio, LCR)は銀行が短期的な資金需要に対応できるかどうかを示す指標である。

具体的には30日間の厳しいストレス環境下で発生する可能性のある純キャッシュアウトフロー(資金流出額)に対して、十分な高品質流動資産(HQLA)を保有しているかどうかを示す。この比率が100%以上であることが求められている。

高品質流動資産には以下のようなものが含まれる。

  1. 現金および中央銀行預金:最も流動性が高い資産である。
  2. 政府債券:高信用格付けを持つ政府が発行する債券であり、市場で簡単に売却できる。
  3. 一部の高信用格付けを持つ企業債券や株式:特定の条件を満たす場合に限り、HQLAとして認められる。

流動性カバレッジ比率の導入により、銀行は短期的な資金繰りの問題に対応しやすくなり、急な資金需要にも対応できるようになる。

レバレッジ比率

レバレッジ比率(Leverage Ratio)は銀行がどれだけの資産を自己資本で支えているかを示す指標である。

これは自己資本を総資産で割ったものであり、リスクの重み付けを行わないため、非常にシンプルな計算方法である。バーゼルⅢでは最低でも3%以上のレバレッジ比率を維持することが求められている。

レバレッジ比率の導入により、銀行が過度にリスクを取ることを防ぎ、健全な財務基盤を維持することができる。これは銀行が自己資本を増やすことで借入に依存しすぎないようにするための重要な指標である。

なぜバーゼルⅢが大事なのか?

リーマンショックの背景

リーマンショック覚えているだろうか?これは2008年にアメリカで発生した金融危機であり、その中心には大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズの破綻があった。この出来事は単なる一企業の破綻にとどまらず、世界中の金融市場に大混乱を引き起こし、経済全体に深刻な影響を与えた。このような金融危機がなぜ発生したのかを理解することでなぜバーゼルⅢが重要なのかが分かる。

リーマンショックの原因

リーマンショックの主な原因の一つは銀行や金融機関が過剰なリスクを取っていたことにある。具体的にはサブプライムローンという高リスクの住宅ローンが大量に提供され、それが証券化されて世界中に販売された。これにより、多くの金融機関が高リスクの金融商品を大量に保有することになり、住宅市場が崩壊したときに巨大な損失を被った。

さらに、多くの銀行が自己資本を十分に持たず、借入金に大きく依存していたため、損失を吸収する能力が不足していた。これにより、金融市場全体が信用不安に陥り、資金の流れが停止するという状況が生まれたのである。

バーゼルⅢの役割

このような金融危機が二度と起こらないようにするため、バーゼルⅢのルールが導入された。バーゼルⅢは以下のような方法で金融システムの安定性を高めることを目指している。

  1. 自己資本の強化:銀行が十分な自己資本を持つことを求めることで経済的なショックに対する耐性を強化する。具体的にはより高品質な資本(普通株式など)を増やし、損失を吸収できる力を高めることが求められている。
  2. 流動性の確保:銀行が短期的な資金需要に対応できるよう、十分な高品質流動資産を保有することを義務付ける。これにより、突然の資金流出にも耐えられる体制を整えることができる。
  3. レバレッジの抑制:銀行が過度に借入に依存しないよう、レバレッジ比率を設定し、自己資本に対して一定の範囲内で資産を運用することを求める。これにより、借入によるリスクを適切に管理し、安定した運営を行うことができる。

バーゼルⅢの重要性

バーゼルⅢが導入されたことで銀行はより安全にお金を扱うことができるようになった。具体的には以下の点で金融システム全体の安定性が向上している。

  • 予防的な資本管理:自己資本比率の強化により、銀行はリスクを適切に評価し、予防的に資本を管理するようになった。これにより、経済的なショックに対する耐性が向上した。
  • 短期的な資金繰りの安定:流動性カバレッジ比率の導入により、銀行は短期的な資金需要に迅速に対応できるようになった。これにより、急な資金流出にも耐えられる体制が整っている。
  • 過剰なリスクの抑制:レバレッジ比率の規制により、銀行は過剰な借入に依存せず、適切な範囲内でリスクを管理することが求められている。これにより、金融市場全体の安定性が向上している。

バーゼルⅢのまとめ

バーゼルⅢは銀行が安全にお金を扱うための重要なルールであり、自己資本比率、流動性カバレッジ比率、レバレッジ比率といったポイントがある。これらのルールを守ることで銀行はより強固な財務基盤を築き、経済的なショックに対する耐性を高めることができる。結果として、預金者や投資家にとっても安心してお金を預けられる環境が整うのである。