金融占星術の怪しさ。占いによる市場予測は統計的に有意な結果をもたらさない

金融占星術、あるいは「占星金融学」とも呼ばれるこの手法は金融市場の動向を占星術によって予測しようとする試みである。古代バビロニアやエジプトから伝わる占星術が、21世紀の高度に発展した金融市場に適用されるというのは一見するとロマンチックで魅力的である。しかし、現実はそう甘くない。本稿では金融占星術の問題点を具体的な事例とともに明らかにし、その幻想を打ち砕く。

金融占星術の始まり

金融占星術の歴史を辿ると、ウォール街のトレーダーであったウィリアム・ギャン(William Delbert Gann)の名が浮かび上がる。彼は20世紀初頭に活躍し、占星術や数秘術を駆使して驚異的な投資成果を上げたとされる。ギャンの著書は今でも一部の投資家にとってバイブルのような存在である。しかし、ギャンの手法の有効性には多くの批判があり、その再現性についても疑問の声が絶えない。

科学的根拠の欠如

金融占星術が抱える最大の問題はその科学的根拠の欠如である。占星術は天体の動きをもとに人間の運命や出来事を予測するが、その関連性は科学的には証明されていない。例えば、2011年に米国証券取引委員会(SEC)が行った調査によれば、占星術による市場予測は単なる偶然の産物であり、統計的に有意な結果をもたらさないことが示されている。これは占星術がいかに魅力的であっても、それが投資戦略として有効でないことを意味する。

金融占星術の犠牲者たち

金融占星術に依存した結果、多くの投資家が大きな損失を被ってきた。例えば、1970年代に活躍したジェローム・ドリュー(Jerome Drew)は占星術を駆使して莫大な利益を上げたとされるが、彼のフォロワーたちはその後、多額の損失を被った。ドリュー自身も、最終的には市場から退場を余儀なくされた。彼の失敗は金融占星術が一時的には成功することがあっても、長期的には持続不可能であることを示している。

デジタル時代の金融占星術師

21世紀に入ると、金融占星術は新たな形で進化を遂げた。多くの「デジタル占星術師」がSNSやYouTubeを通じて自分の予測を発信し、多くのフォロワーを獲得している。例えば、アメリカの占星術師リンダ・グッドマン(Linda Goodman)はその正確な市場予測で一躍有名になった。しかし、彼女の予測の多くは後に誤りであることが判明し、多くの投資家が損失を被った。

詐欺の温床

金融占星術は詐欺の温床にもなりやすい。占星術師を名乗る詐欺師たちは高額な料金を取って投資アドバイスを提供し、その結果、多くの被害者を生み出している。例えば、2019年にはインドで「占星術による株式投資アドバイザー」を名乗るグループが摘発され、多くの投資家から数億ルピーを騙し取った事件が発生した。このような詐欺は金融占星術の信頼性をさらに低下させるものである。

金融占星術の幻想

金融占星術はその魅力的な表現とは裏腹に、科学的根拠が乏しく、多くの投資家に損失をもたらす危険性がある手法である。W.D.ガンやジェローム・ドリューのような一時的な成功例もあるが、それは例外に過ぎない。現代のデジタル時代においても、金融占星術は詐欺の温床となり、多くの人々を惑わしている。本稿を通じて、金融占星術の危険性とその幻想を理解し、健全な投資判断を下すための一助となれば幸いである。