経済学者が必ずしも大金持ちとは限らない。
経済学とは世の中の仕組みをお金の流れから分析する学問であり、金儲けのための学問ではないからである。
とはいえ世界で最も権威のある経済学の賞ともいえるノーベル経済学賞を取るような学者であれば、自分の理論を活かして、市場を分析すればそれなりに儲けられる人間もいるのではないだろうか?
そこで今回はノーベル経済学賞を受賞した学者の中で金持ちになった人物を2人紹介する。
ロバート・シラー(2013年受賞)
まずはじめはロバート・シラーである。おそらくノーベル経済学賞を受賞した学者の中でもっとも金持ちだと思われる。彼は2001年代のITバブル崩壊と2008年のリーマンショックを予測していたことで知られる。
シラーの最も著名な業績は「シラー指数」として広く知られるケース・シラー住宅価格指数である。この指数はアメリカの住宅市場における価格動向を詳細に追跡するものであり、不動産市場の健全性やバブルの兆候を評価するために用いられている。
この指数の開発により、シラーは経済学と不動産市場における権威としての地位を確立した。特に2008年の金融危機において、シラー指数は住宅バブルの早期警告を発する役割を果たしたことで広く注目を集めた。
シラーはこの指数を基にしたビジネスチャンスを活用し、関連する金融商品やコンサルティング業務を通じて相当な財産を築いた。また、シラーはイェール大学の教授として長年にわたり経済学を教えており、その地位から得られる収入も無視できない。さらに、シラーは多くのベストセラー書籍を著しており、これらの書籍は世界中で広く読まれている。
ポール・サミュエルソン(1969年受賞)
もう一人注目すべき人物はポール・サミュエルソンである。サミュエルソンは現代経済学の基礎を築いた経済学者である。彼は数多くの理論的貢献を行い、その中でも「新古典派総合」として知られる経済理論の統合に大きな影響を与えた。この理論はケインズ経済学と古典経済学を融合させ、経済政策の枠組みを提供するものであり、現代経済学の重要な礎となっている。
サミュエルソンの教科書『経済学(Economics)』は1948年に初版が出版され、その後も多くの版を重ねている。この教科書は経済学を初学者にもわかりやすく解説することを目的としており、広範な経済理論を包括的にカバーしている。多くの大学や教育機関で採用され、経済学を学ぶための標準的なテキストとして知られている。この教科書の成功により、サミュエルソンは巨額の印税収入を得た。教科書の売り上げは世界中の市場で非常に高く、その収益は数千万ドルに達すると推測される。
さらに、サミュエルソンはマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授として長年にわたり教鞭をとり、多くの優秀な経済学者を育てた。彼の教育活動と研究は経済学界における彼の名声を高め、経済学の発展に寄与した。彼の教え子には後にノーベル経済学賞を受賞する経済学者も多く含まれている。
サミュエルソンの財産は彼の学術的な業績とそれに伴う収益によって築かれたものである。彼の経済理論と教育に対する貢献は経済学の発展において極めて重要であり、彼の財産もまた、その成果の一部である。
その他の経済学者
上記の2人ほどでないにしても、それなりに儲けた経済学者も2人紹介する。
ハリー・マーコウィッツ(1990年受賞)
ハリー・マーコウィッツは1950年代に現代ポートフォリオ理論(MPT)を提唱したことで知られている。この理論は投資のリスクとリターンの関係を数学的にモデル化し、投資家が最適なポートフォリオを構築するための基礎を提供するものである。マーコウィッツの理論は投資分野における革命的なものであり、多くの金融機関や個人投資家にとって不可欠なツールとなっている。
彼はこの理論を基にしたコンサルティング業務や教育活動を行い、多くの企業や投資家に助言を提供した。また、彼の著作や研究論文も広く読まれ、その印税収入も彼の財産形成に寄与している。さらに、マーコウィッツは投資運用業務にも関与し、実際の投資活動からも収益を上げている。
ウィリアム・シャープ(1990年受賞)
ウィリアム・シャープはキャピタルアセットプライシングモデル(CAPM)の開発者として有名である。CAPMは投資家がリスクとリターンの関係を評価するためのモデルであり、証券の価格設定やポートフォリオの構築において広く利用されている。このモデルはリスクフリー金利、リスクプレミアム、ベータ値という概念を導入し、リスクとリターンの均衡を説明するものである。
シャープもまた、この理論を基にした多くの業績を通じて財産を築いた。彼は金融機関や企業に対してコンサルティングサービスを提供し、その報酬として相当な収入を得ている。また、シャープは投資運用会社の設立にも関与し、そこでの収益も彼の財産形成に貢献している。さらに、彼の著作や講演活動も広く認知され、その影響力と収入の源となっている。
まとめ
以上のように、ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツ、ウィリアム・シャープ、ロバート・シラー、そしてポール・サミュエルソンはそれぞれが卓越した経済理論や金融モデルを提唱し、学問的な成功と実践的な応用の両方で多大な財産を築いた。
彼らの業績は経済学や金融の世界において今なお重要な影響を与え続けている。
彼らの成功は知識と洞察力、そしてそれを実践に移す能力がいかに重要であるかを示すものである。